椎名林檎『加爾基 精液 栗ノ花』 レビュー

東芝EMI/Virgin Music、二〇〇三年

加爾基 精液 栗ノ花

加爾基 精液 栗ノ花

オシャレな渋谷系に対しスレた新宿系を自称したシンガーソングライターの3rdアルバム。「カルキ・ザーメン・クリノハナ」と読むが、こんな卑語を含む作品がオリコン上位にランクインしたのは他にサザンオールスターズマンピーのG★SPOT』位か。テレ朝『NEWS23』出演時に題名を言い淀む筑紫哲也を「ザーメンですけど、それが何か?」と一蹴したのは痛快だった。ジャズや演歌にロックにパンクにアイドル歌謡までミクスチャーされた音楽性の高さに加え、文学的な歌詞もソウルフルな歌声も非の打ちどころがなくJ-POPの奇跡とさえ思えるが、外見の愛らしさからゴーストライターがいると見縊られることもあったとか。その才能の根底には英国留学やR&Bシンガーの実兄・椎名純平の影響もあるだろう。本作のアングラさと化粧品「マキアージュ」CM出演時の透明感の乖離は、挑発的な攻撃性と古風な奥床しさの混在したフェミニンさに満ちている。(400字)

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
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