「備品が届くのは夕方頃ですので、まずは別の空き教室で準備などなさっていただけますか?」
学長に促され空き教室のデスクに腰を据えつつ学内資料に目を通していたところ、「派遣アシスタント(女性限定)」という書類に目が留まった。白ブラウスにタイトスカートのモデルとおぼしき女性のまばゆい営業スマイルの裏に、えもいわれぬ心象風景が透けてみえた。なるほどこの手の女性も悪くないなとさっそく電話を入れ、即日勤務可能者の履歴書をファクスしてもらう。
一瞥してすぐさま、再コール。
「チェンジは何回まで可能ですか?」
「なにか問題がございましたでしょうか?」
「何がって、顔だよ」
「……顔ですか?」
「写真じゃよくわからんのでね」
「……それがどうだというのでしょうか?」
「どうって、私は美人のアシスタントを希望しているんだよ」
「美人って、どうしてでしょうか?」
「どうしたもこうしたもない! 女は顔だ!」
「失礼ですが、お客様は私どものお仕事を性を売り物にするようないかがわしい種類のお仕事と、勘違いされていたりしませんか?」
「まあ、似たようなものなんじゃないのかね?」 
「なんですって? わたくしどもは、そういう商売をしているわけではないんですよ!」
「そんなマジにならなくたっていいだろ。フェミニズムなんて時代遅れだろ」
「いい加減にしてください! あなたのような男性がいるからいつまでたっても女性の社会進出がままならないんです!」 
「わかったわかった、そうヒステリックにならなくっかっていいじゃないか。耳が痛い。それじゃ、もういいよ。こちとらわんさか女子校生に囲まれての生活だからね。女には不自由しとらん」
「まあ! 何て言い分でしょう!? そんな危険な先生のもとにうちのスタッフを送るなんて、こっちが願い下げです!」
「そうかいそうかい。わかったよ。んじゃな」
ふ〜。
なんてこった。
慣れないことを頼むんじゃなかったな。
まあいいか。
そうこうしているうちカウンセリングルームに設備が届いたとのこと。
ここが私のハーレム、もとい職場となるわけね。楽しみだなあ。