掌篇『スパイ』555字「第一回 てきすとぽい杯」19作品中11位&お題の使い方が素晴らしかったで賞

「了解」
 今回のミッションで初夢が死んだことを伝えに来たポップコーンに、振動は真顔のまま答えた。

「奴はお前と同期だろ。他に言う事はないのか?」
「察してくれよ。ありすぎて何も言えないのさ」
「意外に良い奴なんだな」
「そうでもない。初夢を殺したのは俺だよ」
「もしかしてスパイなのか?」
「だったらどうする?」
「ここで殺し合うことになる」

 言うや否やポップコーンの体は爆発して、中から飛び出した小さな白い凶器が四方八方から振動に襲いかかる。
 しかし振動の体は小刻みに震えながら、いとも簡単に全ての攻撃を跳ね返す。
 弾かれた凶器はポップコーンの本体に次々と突き刺さり、やがて本体は動かなくなった。

「ここまでがお前の初夢さ」
 初夢が振動に向けて言う。
「なるほど。そうすると今おれは起きているのか?」
「とっくに死んでる」
「そんなことだろうと思ったよ」
 かくして初夢は敵国のスパイだった振動を殺す事に成功した。

「やっぱりお前は強いな」
 どこからかポップコーンがやってきて初夢に伝える。

「同期の中で常に一番だったのは振動の方さ」
「奴とは仲が良かったんだろ。よく殺せたな?」
「むしろ仲が良かったから殺せたんだ。安心している隙に夢を視させて」
「俺には通用しないぜ」
「わかってる。お前がスパイじゃないことを祈るよ」
「お互いさまだけどな」
「ああ」(了)