在日ファンク『きず』レビュー

P-Vine Records、二〇一〇年

きず

きず

包帯に憧れ、もっと傷つけてと叫ぶこの曲のPVで踊る女子高生のうち1人は包帯だらけ。包帯少女といえば綾波レイが代表的だが、ココロのキズを可視化させたい欲求を喚起させるのか。後半「きずきず」のリフレインが「ずきずき」に聴こえて痛々しいが、そもそもどうして「きず」なる言葉が産まれたのか気になるところ。念のためバンド名についても説明しておくと「日本に在りながらファンクをやっている」という意味。近ごろは在日=在日朝鮮人と受け取られてしまうが、それを逆手にとって「在日日本人」なんて本を出した官僚もいた。ヴォーカルの浜野謙太はインストバンドSAKEROCK」のトロンボーン奏者として既にデビューしていたから、事情を知った上であえてこの言葉を使える余裕があったのだろう。いったん定着したイメージをなかなか覆せないのは治らないキズのようなものであり、そしてそれを癒すには清潔な包帯よりも泥臭いファンクが有効だ。(400字)

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
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