高橋しん『花と奥たん』既刊1巻レビュー

花と奥たん 1 (ビッグコミックススペシャル)

花と奥たん 1 (ビッグコミックススペシャル)

・100字レビュー

巨大植物に覆われた都心から帰ってこない夫を待つ「残され主婦」モモ。汚染の恐れのある作物で料理する様は原発事故を経た現実にも重なる。『最終兵器彼女』の発展系かつ主婦×食事は『花のズボラ飯』にも共通する。

・長文レビュー(400字)

巨大植物に覆われた都心から帰ってこない夫を待つ「残され主婦」モモは、ミニウサギと暮らしている。ご近所は汚染を恐れ口にしない農作物を使って得意料理に精を出す様は、原発事故を経た現実とも重なる。セカイ系の名作として知られる『最終兵器彼女』の発展系に思えるが、なぜ主婦をヒロインに選んだのか。限界小説研究会『社会は存在しない』の書名はサッチャー首相の言葉から引用されていたが、そこには家庭を最小単位とする発想があった。夫不在の家を守る妻が一人で料理を作る構図は、同時期に売れた『花のズボラ飯』(久住昌之・作/水沢悦子・画)とも共通するが、それは同じ原作者による『孤独のグルメ』(谷口ジロー・画)の女性版で、偶然の一致は不景気によって主婦希望者が増えた影響か。古風な人生観の復権は夫婦の接点が食事な点にも表れている。有名シェフでさえ愛妻料理が一番旨いと言うように、家庭の味を奪われることは家を失うにも等しい。

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
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