村上裕一『ゴーストの条件 クラウドを巡礼する想像力』レビュー

ゴーストの条件 クラウドを巡礼する想像力 (講談社BOX)

ゴーストの条件 クラウドを巡礼する想像力 (講談社BOX)

・100字レビュー

東浩紀ゼロアカ道場」最終関門通過者のデビュー本。中間共同体「ゴースト」すなわち「水子」による物語の自給自足を提唱する。消え失せていく僕らの過去や未来や現在も、語られることによってのみ延命されうる。

・長文レビュー(400字)

批評家養成企画「東浩紀ゼロアカ道場」最終関門通過者のデビュー本。同レーベル『東浩紀コレクション』に近い四百字詰九百枚はある分厚さにも気合いの程が伺える。これまで作者的→読者的→社会的の順に発展してきたキャラ論を東や斉藤環と同じ読者的に回帰させるべく、中間共同体「ゴースト」による物語の自給自足を提唱する。天皇からAKB48を経て、育成のダイナミズムと新陳代謝メタボリズムによって固有名の象徴性が回復され独立したキャラは、やる夫や初音ミクのようにクラウド化された集合知の二次創作によって「ゴースト」すなわち存在しない「水子」として延命されるが、実は僕らの過去や未来や見えない場所にある現在も「ゴースト」に他ならず、それは語られることによって生き続けると説く。東日本大震災を挟んだことを思えば、発刊まで二年かけなければ為し得なった巡礼の軌跡であり、ゼロ年代の亡霊を弔うにふさわしい希望に満ちた挽歌だ。

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
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