スティーブン・キング『ダーク・タワー』全16冊レビュー

ダーク・タワー1 ガンスリンガー (新潮文庫)

・100字レビュー

『指輪物語』で男達を魅了した指輪には形状的に女性器を思わせる感じがした。それに対し古来より男根の象徴だった塔を目指す本作の主人公は女性。侵入を阻む刺客が弱くなっていく様にもそういった暗喩が見て取れる。

・長文レビュー（400字）

『指輪物語』へのオマージュとして描かれたこの大長編は二十年もの歳月を経て完成された。死ぬまでに完結できればいいと考えていたが交通事故で死にかけたことにより早々に終わらせる気になったのだとか。『指輪物語』とどう関連しているか考えた際に、多くの男性たちを魅了した指輪には形状的に女性器を思わせるところがあり、それに対し古来より男根の象徴だった塔を目指す本作の主人公は女性。侵入を阻む刺客たちが塔に近づくにつれて弱くなっていく様にもそういった暗喩が見て取れる。本作を論じた藤田直哉のデビュー論文にそんな考察は出てこないように、作者は精神分析を下品なものとして嫌っていたそうである。しかし作品の暗示するものは作者の意図とは無関係なのであり、ファンタジーの原型たる古代神話には猥褻なエピソードが満載なことを忘れてはならない。神話にしろ大衆小説にしろ下卑ているからこそエンタメ性を獲得しているのかもしれないのだ。

※批評誌『新文学０４　現代文化のセクシュアリティ／原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
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