団鬼六『最後の愛人』レビュー

最後の愛人 (無双舎文庫)

最後の愛人 (無双舎文庫)

・100字レビュー

著者が八〇歳で往生を遂げたことを悲しむものはSMに傾倒する者ばかりではなかった。本書は二四歳で自殺した愛人との実話。本妻や娘も公認だったのは勃たぬせいもあり、彼女は愛情の証のないことを悩んでいた節も。

・長文レビュー(400字)

官能小説はダイレクトに視覚や聴覚を刺激するのではなく、文章を咀嚼して脳で味わうものだから高尚なのかどうか分からないが、とにかく官能小説の大家だった著者が今年八〇歳で往生を遂げたことを悲しむものは、彼の得意なSMに傾倒する者ばかりではなかった。本書は〇二年に二四歳で自殺した最後の愛人「さくら」との実話である。年齢差は五十弱。古希を超えEDに悩む様は『奴隷船』収録の短編『浜田山快楽園』にも記されている。バイアグラは効くが感覚が麻痺するため使わなくなったという。理想の愛人を囲えても肝心のものが役立たずとは上手く行かないものである。本妻や歳の近い娘も公認だったのは勃たぬせいもあり、死の理由こそ定かではないが愛情の証のないことを悩んでいたらしい。ところでIT社長からAVソムリエや小説家になったホリエモンは目標が見えないと言われるが、相場師だった鬼六がSMの大家になったことを思えば別段不思議ではない。

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
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