綿矢りさ『インストール』レビュー

インストール (河出文庫)

・100字レビュー

女子高生が小学生男子と出会い系チャットでサクラのバイトをする話。心は売っても体は売らない小悪魔路線はその後の作品にも共通。成人男性が喜ぶツボを太宰を介して見つけたJK作家には「ニンフェット」を感じる。

・長文レビュー（400字）

女子高生が小学生男子と出会い系チャットでサクラのバイトをする話。心は売っても体は売らない小悪魔路線はその後の作品にも共通するが、このデビュー作は太宰治『女生徒』の影響で産まれた。太宰の元に届いた女学生からのファンレターに彼は『枕草子』に似た感性を発見し、小説の題材にした。成人男性が喜ぶツボを太宰フィルタを介して見つけた現役JK作家のルックスがアイドル風だったこともあって、作中「濡れた」の一節に陥落したオヤジは多いだろう。挿入を意味する題名にもしたたかな感性は発揮されているが、もちろんセックスではなくOSにソフトを組み込ませるPC用語である。これは作者がエロいというよりテクニックに過ぎないが「ニンフェット（ロリータ）には素養の有無がある」とナボコフが書いたように彼女もまたその才能の持ち主だった。高橋源一郎の解説で「若いからではなく現代の書き手全体の中でも完璧な天才」と絶賛されていることが何よりそれを証明している。

※批評誌『新文学０４　現代文化のセクシュアリティ／原発事故へのアクション』寄稿レビューを一部修正。
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