斉藤環+酒井順子『「性愛」格差論 萌えとモテの間で』レビュー

・100字レビュー

オタクの敗因は弱さだが負け犬の敗因は強さ。勝因と考えれば逆になる。オタクと負け犬の代表を自認する二人の対談本が存在している事実こそが格差社会を生き抜く「システムの外にある希望」の可能性を実証している。

・長文レビュー(400字)

『社会的ひきこもり』や『戦闘美少女の精神分析』などで知られる斉藤と『しょうゆ顔少年の謎』や『負け犬の遠吠え』で知られる酒井が「萌えとモテ」を巡って語らう。オタクの敗因は弱さだが、負け犬の敗因は強さ。勝因と考えれば逆になる。斉藤の説く「ファリック・マザー」と「おひとり様」は女性の社会進出に伴い顕在化された男性的な女性という点で共通しているが、一方で女性的な男性は「草食系男子」と呼ばれる。男性的女性的といっても先天的資質ではなく、社会の要請によって後天的に植えつけられたレッテルに過ぎない。オタクや腐女子の嫌婚や嫌儲には正しい人間であろうとする宗教的なところがある。互いに我が道を譲らないから平行線のまま交差しにくい関係とはいえ、それぞれオタクと負け犬の代表を自認する二人の対談本が存在している事実こそが、理不尽な格差社会を生き抜くために必要な「システムの外にある希望」の可能性を確かに実証している。

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
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