宇野常寛『ゼロ年代の想像力』レビュー

ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1)

ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1)

・100字レビュー

東浩紀を批判的に踏襲する本書は「セカイ系」を「母性のディストピア」に抑圧された「レイプ・ファンタジー」に過ぎないとして「決断主義」を呼びかけ、各方面から反論が相次いだが、今後も議論の余地があるだろう。

・長文レビュー(400字)

オタク文化ポストモダン思想に関連づけゼロ年代を説明した東浩紀を批判的に踏襲する本書で宇野は『DEATH NOTE』やクドカンのドラマ、平成ライダー、『三丁目の夕日』『恋空』などを参照し、オタクの好む「セカイ系」は「母性のディストピア」に取り込まれ、抑圧された父性のはけ口「レイプ・ファンタジー」に過ぎず、この先「サヴァイヴ」し生き残るためには「決断主義」しかないと呼びかけた。これに対し小説家の笠井潔率いる評論家集団・限界小説研究会は『社会は存在しない』にて「宇野の決断主義こそ時代遅れの産物」と反撃、『新文学03』でも北守が「大きな物語の終焉からして眉唾」とし、辺見九郎が「シュミットの決断主義と宇野は真逆である」として断罪した。ネット上にも多くの反論が相次いだが、本書刊行後にテレビのコメンテーターなど活躍の場を広げてきた彼を擁護する向きも少なくないと考えれば、今後も議論の余地があるだろうか。

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
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