佐野洋子『100万回生きたねこ』レビュー
- 作者: 佐野洋子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1977/10/19
- メディア: 単行本
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「100万回読みたい本」と言いたいところだけど、実際に読んだのは10回くらいだろうか。読書は作者もしくは登場人物の追体験であり、それを転生と捉えたなら100万回の読書は「100万回生きた読者」である。
・長文レビュー(527字)
とりあえず上記の100字レビューを書いていたんだけど、10回くらい読んだと言いながらも、ずいぶん内容を忘れていた。歳を重ねるごと定期的に読んでいたなら忘れなかったと思うが、子供の頃に何回も読み返していただけで、本当は久しぶりに読んだ。
主人公であるオスの「とらねこ」は絵本の前半で王様や泥棒や女の子など色んな人に飼われては無残な死を遂げており、そういう点で余り幼い子供に読み聞かせて良いものだろうか考えさせられる。けれど飼い主たちは「とらねこ」が死ぬたびに泣くので、情操教育には良いのかもしれない。
後半になると「とらねこ」は野良猫として生きていくことになり、そこで出会ったメスの「白いねこ」に「俺は100万回も生きてるんだぜ」と自慢する。しかし「白いねこ」はそっけなく「そう」と答えるだけ。「とらねこ」は次第に「白いねこ」に惹かれていき、一緒に暮らすこととなる。
それからしばらく経って、人に飼われていた頃には泣いたことのなかった「とらねこ」は初めて泣く。その経緯についてはネタバレしない方が良いと思うので詳しく説明しないでおくけれど、それを読んだ僕も「とらねこ」と同じく泣いてしまう。もともと涙腺が弱いせいもあるが、これだけ泣ける絵本はそうそうないと思う。
※書評でつながる読書コミュニティ『本が好き!』に書いたのと同じものです。