真鍋昌平『闇金ウシジマくん』既刊23巻レビュー

闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)

闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)

丑嶋馨(ウシジマ・カオル)は「闇金」と呼ばれる違法金融業者カウカウファイナンスの社長。取り立てのためなら命さえ奪う冷酷さだが、一方で母の形見だったウサギを何十匹も飼う一面も。合法業者に見放された多重債務者などを相手にトゴ(十日で利息五割)で暴利を得る。借金十万円が二十日で倍額になり完済は難しい。それでも賭博や遊興で理性を失い金銭感覚の狂った利用者は後を絶たない。そんな彼らの破滅的な生活描写が、とにかく世知辛い。心を病んだ風俗嬢、性欲を持て余すリーマン、服のため薬を密売する読者モデル、貧困ビジネスの食い物にされる若年ホームレス。美形キャラが少ないのもリアルだ。表面上は堅気な債務者の邪悪さに対し、営業や回収に奔走する闇金業者の仕事ぶりは極めて勤勉。ピカレスクロマンの常でウシジマがカッコよく見えてしまうが、欲に駆られ借金を踏み倒そうとする輩に鉄槌を下す様は、神にも近い存在に見えてくるのがエグい。(400字)

※批評誌『新文学03 革命×ネット×二十一世紀文化のエグいコンテンツ』寄稿レビューと同じです。

松平耕一編(主催者ブログ:文芸空間
価格 ¥800
単行本:A5版、230ページ
出版社:文芸空間社(バックナンバー通販:文芸空間社購買部 )
発売日:2010/12/05
ネット通販:とらのあなWebSite
店舗販売:新宿 模索舎、中野タコシェほか