谷川俊太郎『夜のミッキーマウス』レビュー

夜のミッキー・マウス (新潮文庫)

夜のミッキー・マウス (新潮文庫)

十代でデビューしてから六十年以上も詩人を続けてきた谷川の詩はどれも流石の風格だが、この本で特筆すべきエグさを持つのは「なんでもおまんこ」である。のっけから「なんでもおまんこなんだよ、あっちに見えてるうぶ毛の生えた丘だってそう」と来て、風が吹けば「風とはもうやってるも同然、うまいんだよさわりかたが」と、執筆時に古希を越えていたとは思えない瑞々しさ。最後に土をかけてくれと頼み「死にてえのかな」と考える辺りは賢者タイムにおける男の悲哀も。「百三歳になったアトム」では「きみおちんちんないんだって?」と聞かれたアトムが「それって魂みたいなもの?」と答える。彼は二〇〇三年生まれだから二一〇六年。「プログラムのバグなんだ」とのフレーズもあるように二一〇六年問題がある。C言語の限界でコンピュータ経過時間が一九七〇年に戻る。それは高度経済成長の象徴ともなった大阪万博の年。本物のアトムは生まれているだろうか?(400字)

※批評誌『新文学03 革命×ネット×二十一世紀文化のエグいコンテンツ』寄稿レビューと同じです。

松平耕一編(主催者ブログ:文芸空間
価格 ¥800
単行本:A5版、230ページ
出版社:文芸空間社(バックナンバー通販:文芸空間社購買部 )
発売日:2010/12/05
ネット通販:とらのあなWebSite
店舗販売:新宿 模索舎、中野タコシェほか