福満しげゆき『やっぱり心の旅だよ』レビュー

やっぱり心の旅だよ

やっぱり心の旅だよ

カルト系漫画雑誌「ガロ」でデビューした福満の作風は、つげ義春蛭子能収にも近い悪夢的狂気を描く後ろ向きで暗いものが多かった。けれど今「モーニング」や「アクション」で五歳年下の若妻との新婚生活を綴り人気を博しているコミックエッセイは、作者のひねた性格も多少は反映されているものの、基本的に以前とは違うほのぼのムードである。「妻」人気に乗じてフィギュアや抱き枕も販売されたが、作中にエロはない。対して本作にはエロや悪夢といった彼の本領が発揮されている。「妻」似女性の性行為を描く作品もあり「妻」ファンにもお勧めできる。それら私生活モノにSFを交える試みや、少年漫画的アクション活劇『生活』の基礎となる社会派路線、鬱々とした本来の作風とは真逆の明け透けなエロ、実はフィクションの読者投稿原作エロ話などバラエティに富んでおり、作家性との折り合いを模索しながら様々な表現方法に挑んできた作者の努力が窺い知れる。(400字)

※批評誌『新文学03 革命×ネット×二十一世紀文化のエグいコンテンツ』寄稿文と同じです。

松平耕一編(主催者ブログ:文芸空間
価格 ¥800
単行本:A5版、230ページ
出版社:文芸空間社(バックナンバー通販:文芸空間社購買部 )
発売日:2010/12/05
ネット通販:とらのあなWebSite
店舗販売:新宿 模索舎、中野タコシェほか