おじぎり、ひとつだけちょうだい。

このフレーズ、いつの頃からか妙に頭に焼き付いていて、たまに脳内をリフレインすることがあります。ついさっきまたそうなったもので検索してみたら、モトネタが判明。小学校の教科書に載っていた児童文学作家・今西祐行(いまにし・すけゆき)さんの『一つの花』という童話に登場する女の子「ゆみ子」の口ぐせだったんですね。後半の粗筋だけ紹介しておきます。

幼い「ゆみ子」は戦争に行くお父さんを見送る際に「おじぎり、ひとつだけちょうだい」と繰り返して、お父さんのためにお母さんが握ったおにぎりを全部食べてしまいます。それでもまだ足りず「ひとつだけ、ひとつだけ」と言いながら泣きだしてしまいました。可哀想に思ったお父さんはプラットホームのはしに咲いていたコスモスの花を一輪、ゆみ子に手渡し「一つだけのお花、大事にするんだよ」と言い残して旅立ちました。それから十年後、ゆみ子は自分にお父さんがいたことすら覚えていませんが、ゆみ子がお母さんと暮らすとんとんぶきの小さな家は、コスモスの花でいっぱいに包まれているのでした。

銀河鉄道の夜』『ごんぎつね』『火垂るの墓』『フランダースの犬』といった泣ける童話に、どういうわけか昔から目がないもので、これもそういうことで記憶に残っていたのかもしれません。『一つの花』は小学4年生の国語の教科書のほか、1975年にはポプラ社から絵本も出ています。作者の今西祐行さんは2004年に81歳で他界されたそうです。

※2008/05/14追記:全文が掲載されているページがありましたのでリンクを張っておきます。
http://blog.livedoor.jp/texas/archives/573239.html
※2011/10/17追記:おそらく小学4年生の女児が朗読していると思われる音声ファイルも見つかりました。
http://www.voiceblog.jp/440ka14/217896.html