古書や宗教のこと(ナインス・ゲート/植草甚一etc)

1999年にフランス・スペインで共同制作されたロマン・ポランスキー監督・ジョニー・デップ主演の映画『ナインス・ゲート』を観た。ポランスキーって妙に覚えている名前だけど、誰だっけ? と思ってDVD収録のプロフィールを見たら、シャロン・テートの旦那だった人とは。『ナインス・ゲート』で重要な役割を持つ謎の女子学生を演じた女優エマニュエル・セニエポランスキーの再婚相手。以前に観た『ニルヴァーナ』という映画でも謎めいた役を演じていた。


冒頭『ドン・キホーテ』の初版4巻揃が4,000ドル(日本円にして40万円)という話が出て「この作品は文学史のことをわかってるな」と思った。『ドン・キホーテ』といえば近代小説の開祖と言われる作品だ。近代以前の物語は批評性を内包した「小説」といえるものではない。DVD収録のデータベースによるとセルバンテスシェイクスピアの没年月日が全く同じとのこと。謎の人物とされるシェイクスピアの正体がセルバンテスであってもおかしくないのではないか。


主人公が「本の探偵」ということで、尋常ならぬ蔵書家として知られる雑誌「宝島」の創始者植草甚一のエッセイに感化され、ジャズを聴くようになったことを思い出した。高校卒業後に上京してから2年間は新聞奨学生をしながら予備校に通った。しかし都会の物量に魅いられて次第に予備校をサボるようになった。朝刊配達を終え賄いの朝食を摂ってからアパートに戻り、昼間はアメ横や神保町をさまよい、午後3時過ぎからは夕刊配達。そんな日々が続いた。


本好きのための映画といえば『華氏451』がまず思い浮かぶ。『吾輩は猫である』『全身小説家』『恋愛小説家』も良かった。映画は小説が原作になっているケースがかなりあるのだから、本好きが喜ぶ設定を持つ作品が多くて当然といえば当然のことかもしれないけれど。


「ナインス・ゲート」とは天使の階級が九つあるところから来ているとのことだが、仏教にも九識という概念がある。十界から仏界を除けば九界である。龍になれない九匹の龍=九龍との関連も興味深い。それにしても日本語のソフトだというのに「じっかい」を変換すると「十戒」は出るのに「十界」は出ないというのはどういうことだろう。もはや現代の日本人のメンタリティを支配しているのは仏教よりキリスト教だということなのだろうか。まあ、神道もあるけれど。