岸田秀『性的唯幻論序説 改訂版「やられる」セックスはもういらない』レビュー

・100字レビュー

寺山修司内田春菊など「売れる思想書」の先鞭たる著者の無頼な人柄を慕う有名人は多く、内田樹も影響を受けていた。「人類の本能は壊れている」と説く「唯幻論」から「セックス離れも趣味だから当然」と看破する。

・長文レビュー(400字)

浅田彰中沢新一を輩出したニューアカの前段階として「売れる思想書」の足がかりを作った著者は、大学教授なのに学会に所属せず、学者というより作家的な人物だ。大学組織や文科省へ辛辣な意見を述べることも多く、寺山修司伊丹十三内田春菊柳美里など彼の無頼な人柄を慕う有名人ファンも多い。思想の根幹をなす「唯幻論」はフロイトの精読から「人類の本能は壊れていて、あらゆる行動は共同幻想に基づく」と説く。だから人間は生殖行為を子孫繁栄のためではなく快楽のために行うセックスマニアであり、親が子を可愛がるのは母性本能ではなく世間体に過ぎないと繰り返してきた。本書でも若者のセックス離れについて「単なる趣味だからしなくなって当然」と持論を貫くが、女性観が古いとの指摘を受け文庫化に際し大幅に改訂された。なお吉本隆明との対談によれば両者の幻想はニュアンスが違うらしい。
近ごろ人気の内田樹も多大な影響を受けていたそうだ。

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿レビューと同じです。
松平耕一編(主催者ブログ:文芸空間
価格 :¥1,050
単行本:A5版、256ページ
出版社:文芸空間社(バックナンバー通販:文芸空間社購買部 )
発売日:2011/12/31
ネット通販:とらのあなWebSite
店舗販売:新宿 模索舎/阿佐ヶ谷 古書コンコ堂/ジュンク堂書店 大阪本店/全国 とらのあな
2012/5/5「COMITIA100」委託販売予定「スペースNo未定」駕籠真太郎先生の公式HP【印度で乱数】原画通販も。