講談社BOXサイン会@KOBO CAFE

講談社BOXマガジン『パンドラ』流水大賞からデビューした小柳粒男さんと泉和良さん、そして意外にも純文学畑から召喚された三田新人文学賞出身の針谷卓史さんといった新人作家お三方によるサイン会&トークショウに行って参りました。外見と話し振りから感じたそれぞれの印象はというと、小柳さんは朴訥として繊細、泉さんはお洒落でユニーク、針谷さんは真面目で頑固そう。三者三様でキャラが被らないところが、ある意味すごいかも。

会場は何と、先月でクローズとなったはずの「KOBO CAFE」でした。とはいえ流石にもう珈琲や紅茶のオーダーはなし。その代わり、おそらく果汁100%の美味しいオレンジジュースが出ました。参加費無料なのに飲み物まで付いてくるとは、太っ腹です。

僕は針谷卓史さんのサインを頂きました。まんがっち西島大介氏による似顔絵入りのスタンプまであるとは。小柳さんと泉さんのサインもほしかったんですが、全員というわけにはいかなかったみたいなので、まあしょうがない。そもそも受賞作が掲載された『パンドラ』本誌を2冊とも持っていることもあって、お二人の単行本は買ってないんですけれどw

針谷さんが純文学系の新人賞から本来ラノベ寄りと思われていた講談社BOXに起用されたことは、ある意味『パンドラ』の方向性を示しているようで、大変興味深い事件です。村上春樹のチャンドラー翻訳文体を踏襲した小柳さんにしろ自然主義文学の本流たる私小説で打って出た泉さんにしろ、ラノベテイストがなきにしもあらずとはいえ、どこかエンタメというよりは純文学臭を漂わせている。

講談社BOXゴッドファーザー太田克史氏が手がけた作家といえば舞城王太郎西尾維新佐藤友哉が御三家というイメージに異論のある人は少なくないでしょう。このうち舞城とユヤタンは純文学系の新人賞である三島由紀夫賞を受賞している。一方であくまでエンタメにこだわる西尾がコミックのノベライズを手がけた縁もあってか、ジャンプ小説賞から定金伸治松原真琴の両名も援軍に駆けつけた。

ベルリンの壁さながらに長らく分断されてきた文壇の垣根を取り払い、ゼロ年代以降の正しい小説のあり方を模索する強い意志を感じる。発売目前の次号『ファウスト』での筒井康隆の起用も、エンタメから純文学に殴り込みをかけた御大の武勇伝を考えてみれば至極当然の成り行きと頷けるものである。