福岡伸一『できそこないの男たち』レビュー

できそこないの男たち (光文社新書)

できそこないの男たち (光文社新書)

分子生物学者の著者は「生命の基本仕様は女」であるとして、旧約聖書の「アダムが自らの肋骨からイヴを作りだした」との神話や、ボーヴォワールの名言「女に生まれるのでなく女になるのだ」を生物学的に誤りだと言い切る。受精卵の染色体は全てメスとして発生し、細胞分裂を繰り返す過程にテストステロンなる物質を母体が大量に浴びて染色体が傷つけられる事故によって後天的にオスになるからだ。さらに男は一生に渡って体内から放出されるテストステロンに自らの免疫系を痛め続けられ、宿命的に女より短命だというから踏んだり蹴ったり。あらゆる点で弱いはずの男が社会を支配してきたのは、女が家を守るかわりに男に外で仕事をさせすぎた結果、男が女の目を盗んで余所に財産を隠すようになり、その余剰が差をつけたのではないかと著者は推測する。実は女より男の方が貧乏を不幸に感じがちなのもそのせいだろう。果たして恵まれているのはどちらなのだろうか?(400字)

※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ原発事故へのアクション』寄稿文と同じです。松平耕一編(主催者ブログ:文芸空間
価格 ¥ 1050
単行本:A5版、256ページ
出版社:文芸空間社(バックナンバー通販:文芸空間社購買部 )
発売日:2011/12/31
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