松たか子さんらが海外小説を朗読 国際ペン東京大会

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表現の自由を呼びかけ、語族を越えた国際交流を目的とする、国際ペン東京大会。

開会式に先駆け行われた文学フォーラム2日目の9月 24日(金)には、松たか子さんがチママンダ・ンゴズィ・アディーチェさん(ナイジェリア)の小説『なにかが首のまわりに』(河出書房新社アメリカにいる、きみ』表題作の改稿)を朗読。ナイジェリア人女性とアメリカ人男性の異文化交流を描く切ないラブストーリーを、森ミドリさんによるチェレスタとピアノの清廉な演奏と共に瑞々しく表現。

演目後には作者がコメント。「アフリカでは日本車が最も信頼できると大人気だから日本に憧れていた。大学教授の両親を持つ私の作品は、本物のアフリカ黒人の小説とはいえないとアメリカの白人男性に言われたこともあったが、先進国同様の教養を身に付け豊かな生活をする者もいる。ステロタイプに見られがちなアフリカ人に顔を持たせ、その背景に人間がいることを知らせていきたい」と語った。

次に神田松鯉さんが莫言さん(中国)の小説『牛』(岩波書店より刊行予定)を朗読。文化革命期中国の悲哀を諧謔的に綴る物語を、講談師ならではの名調子で披露。3頭の牡牛は主人公である少年の遊び友達だったが、餌不足解消のため去勢されることに。牛は国家の貴重資源として厳しく監視されており、慎重に扱わねばならない。しかし一頭が瀕死となり、果ては大騒動にまで発展する。中国琵琶奏者シャオロンさんの幻想的な調べと、田中泯さんの舞踏も。田中さんは全身を赤く塗り性器丸出しも厭わず生命の躍動感を伝えた。

翻訳者の菱沼彬晁さんが、来日できなかった作者のメッセージを紹介。「私が幼少の頃、農民に多くの牛を飼う余裕はなく、子供に牛追い遊びをさせ死期を早めさせた。牛は大事と言いつつ虐待していたのだ。そして今は商品として機械的に殺される。尊厳を奪われた牛を巡る歴史は、文学を取り巻く環境にも似ている」(工藤伸一)