KY力とスルー力

前の日記でも触れた流行語大賞ですが「KY=空気が読めない」という言葉もノミネートされました。

「空気を読む」という発想は合気道から来ているのかなとも思ったのですが、広く世間で使われるようになった背景には山本七平の『空気の研究』というロングセラー本の影響もあるのかもしれません。山本七平といえば別名イザヤ・ベンダサンとして『日本人とユダヤ人』という、これまたヒット本の著者でもあります。

本来はネガティブなはずの属性をポジティブに捉えようという発想といえば、赤瀬川源平の『老人力』があります。おそらくはそこからヒントを得たと思われるのが、みうらじゅんの『童貞力』です。さらにネット上で「スルー力」なる言葉が生まれ、今年は渡辺淳一の『鈍感力』がベストセラー。

スルー力」は特に流行ったわけでもないかもしれないので補足しますと、たとえば2ちゃんねる等のネット掲示板に、話の流れを無視して書きたいことだけ書き続けるKY的な投稿者が居た場合に、わざわざクレームをつけたりすると逆に調子に乗せてしまって掲示板の趣旨が変わってしまうなんて場合があります。そこで無視するのが一番いいという意味で「ネタにマジレス、かっこわるい」と、その手の投稿に反応することを諌められたりします。こういった「スルー」できる態度が「スルー力」というわけ。

だけれどもテレビのトーク番組なんかにしてもそうですが、強引に場の流れを自分の言いように変えてしまえる人もいて、そういうのは「KY」には違いないにしても、結果的に効果的な働きを生み出しているのだとすれば「KY力」といっていいものなのかなとも思います。

むしろ、あるビートニクスの言葉「サイレンス・イズ・デッド」の発想からすれば、KYなんて言っている輩は死んでいるも同然。「私は死んでなんかいません」ですって? ははあ、わかりました。千の風になって吹き渡ってでもいるわけですか。道理で空気を読めるはずです。。。