ALI PROJECT TOUR 2007 暗黒サイケデリック

新宿の東京厚生年金会館で行われたツアー最終日のライヴを観てきました。全席指定の大箱という場所柄「ライヴ」というより「コンサート」という感じでしょうか。12月予定の『月光ソワレ』は60人編成のオーケストラを引き連れて「東京芸術劇場大ホール」で行われるそうなので、そっちは間違いなくコンサートでしょう。むしろ「リサイタル」と呼ぶべきでしょうか。もし僕がやるとしたら「リサイタル」にすると思いますが、まあそれは置いといてw

どういう経緯で観にいったかというと、僕がファンというよりは、旧ユニット名である蟻プロジェクト時代からのファンだという内縁の妻の付き添いで、昨年に続き馳せ参じた次第であります。よく家で流されているので曲は割りと耳馴染みだったりします。音楽性の高さと文学志向なところは、僕も好きです。

今日のライヴでも「私の好きな評論家の著書に『乃木坂血風録』というものがありまして」という宝野アリカ嬢のコメントがあり、聞いたことがある本だなと思ったら福田和也の本でした。文学好きでない人には「SPA!」で長期連載中の坪内祐三との「文壇アウトローズ対談」が一番知られているかもしれませんが、僕は『作家の値打ち』で高橋源ちゃんの『さようなら、ギャングたち』を現代日本文学の最高峰と位置付けたり、舞城王太郎をデビュー時から絶賛していたりという辺りから興味を持ちました。

福田和也というと日本文学に精通しているイメージだったもので、片倉氏のクラシック調な旋律のイメージからボオドレエルやランボオ、ラディゲ、ワイルド辺りが好きなのかなと思ったら、そういう視点もあったんですね。まあ日本文壇における耽美系作家の影響は小林秀夫の評論の恩恵に与るところが大きいかもしれず、そういうところから福田和也に繋がるのかもしれません。なんて偉そうに講釈を垂れてはみたものの、所詮文学青年きどりの僕が言うことですから、かなりいい加減な話なんですけれど。

そういえば『虚無への供物』の話もされていてアリカ嬢は結構ミステリ通のよう。福田和也はミステリと純文学の距離を縮めたポストモダン文学に傾倒している印象もあるので、そこら辺の繋がりしょうか。そもそもミステリといえばポオなわけで、鏡花や乱歩や久作も幻想文学と括れば、浪漫主義もミステリも結局のところ同系統ですね。。。何だか不毛な流れになってきたのでこの辺にしときますw

前回のライヴは定員オーバーな感じでギュウギュウ詰めのスタンディングだったものですっかり疲れ果てて、関係ないでしょうけれども2日後には自転車で転んで全治2週間程度の怪我を負ってしまった位だったんですが、今回は座ってゆったり愉しめました。そもそもヘッドバンキングやらローリングダイブしながらタテノリで踊り狂う類のギグみたいな雰囲気でもないので、こっちの方がしっくりくるような気もします。そのせいか前回に比べ客の年齢層は高めだったように思えます。前回は半分くらいだったゴスロリちゃん率も、精々3割くらいでしょうか。

席は10列目でしたが、舞台が大きく照明品質がいいせいなのか、随分と視界がクリアで舞台が近く見えました。衣装や舞台装置も素敵でしたが、何よりこういうところだと特殊効果がド派手ですね。各種照明は勿論、レーザー放射やら松明やらあって煌びやかなステージでした。

新宿といえば獄本野ばらが先日逮捕された場所なので、逮捕されてなければ今日のライヴにも来たかなあなんて思っていたら、アリカ嬢が「年齢は某ゴスロリ作家よりは少し上」と名前は伏せて触れていました。なお「松田聖子よりは年下」だそうです。

今やアリプロといえばローゼンメイデンのオープンニング主題歌が有名ですが、ローゼンメイデンファンとして知られるローゼン閣下こと麻生太郎氏は自民党総裁選に惜しくも破れました。もし総裁=首相になっていたら今回のツアーはグッドタイミングだった気もしますが、心の闇をテーマにするアリプロだからかどうは不明ですが、そう巧くは事が運ばれなかったようです。むしろバッドタイミングこそアリプロ的な気がします。俄かファンの僕が言うのも何ですがw 

奇しくも今日はアリカ嬢の誕生日だったということで、アンコール後のカーテンコール中にサプライズでケーキが贈られる演出は感動的でした。「ちょっと待った!」という片倉ミッキー氏の肉声を聞けたのは、ラッキーでした。確か前回のステージでは一言も発しなかったりと寡黙な印象の方ですから、まるで『できるかな』最終回でノッポさんが喋った時のようなインパクトを感じました。実は前回のライヴ時には帰りがけに喫煙コーナーで遭遇したので少しは声を聞いたんですが、マイクを通してステージ上で喋るのは珍しいんじゃないでしょうか?

ちなみに驚いたのにはもうひとつありまして、片倉氏は「今日は私の妻でもある宝野アリカの誕生日なんです」と言っていたんです。長年2人でユニットをやってきたのだから多分そうだろうと推測は出来ますが、これまで婚姻関係についての正式なコメントがされたことってあったんですかね? 内縁の妻は、ちゃんとした情報として聞いたことはないとのことでした。