【GEISAI#12レビュー:E-001〜E-010】

E-001【TAO】
幾何学模様のビル群が屹立する夜景。中心のビルを頂として左右対称に少しずつ低くなっている。体内に溶岩を湛えた休火山、はたまた発熱するCPU基盤か。冷たさの中にも熱を感じる、そんな都市の風景。

E-002【中川晋介】
アースカラーで描かれたメルヘンチックな世界観。銀河鉄道回転木馬、水車に旧式バス。ロールシャッハテストのように観る者の心を映す、優しい空間。

E-003【國分郁子】
サイケな色調の内臓をモティーフとしたグロテスクさの中に、世界を愛するが故に憎む孤独な悲哀を感じる。

E-004【大石友美】
牧歌的かつ家庭的なテーマを包み込むような淡い筆致が、ホームシックを喚起させる。添えられた詩は、あくまで優しい。

E-005【大上裕未】
植物柄のパッチワークで円形に象られた様々な動物たちの饗宴。マザーアースへの感謝の念がひしひしと伝わってくる。

E-006【Schole】
青く滲む女性の肖像。物憂げな表情のわりに、どこか満足気だ。降り注ぐ光のスコールは、洞窟の底に棲むというまつろわぬ種族にさえも、あくまで平等に慈愛の水分を与えるのだろう。

E-007【松本慶祐】
ポップなタッチのアニマル・キャラだが、皆一様にディープな現代人的プロフを抱えている。それでも懸命に生きようとする彼らは、無慈悲でリアリスティックな背景に馴染もうと、必死に努力しているのだ。

E-008【satoco.】
雲のような曲線の端が、人間の足になっている。花のようにも見える。女性のファッションセンスを分解すると、こんな感じか。空にたゆたう雲のように不定形な女心。髪の毛とパンツだけが本物の毛糸で顔は見えないところが、むしろ大胆にジェンダーを強調する。

E-009【高広夏子】
8歳のみぎりより新聞を作り続けてきた作者。子供ならではの視点が生み出す、意外に鋭い社会性。大人になってからはコミックエッセイ風。のびやかなヘタうまイラストで綴る日常的な話題に、スロウライフの魅力を感じる。

E-010【Maureen Duncan】
アナログレコードと牙の生えた人々。目が赤く光っているのもいる。ゾンビやドラキュラのようだが、普遍的な服装に身を包む。それは僕ら自身の姿。回らないはずのレコードから心の叫びが聴こえてくる。