掌篇『アルファブロガー』779字「第14回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉」12作品中11位

 久々に更新したブログが炎上して、みるみる血の気が引いた。すっかり錆びきった心は脆くて、今にも崩れ落ちそうだ。かつてアルファブロガーと呼ばれていたせいもあって、長らくSNSばかりしている間中ずっと「ブログも書いて下さい」というメッセージが沢山の読者から届いており、それに応えただけなのにどうしてこんなことに。

 ピアニストは毎日ピアノを弾かないと下手になってしまうという。ブロガーだって長文を書き続けなければ下手になる。それで読まれなくなるだけなら何の問題もないが、自分で思っていた以上に影響力が強すぎたのだ。ブログ炎上の件は、ネットのニュースにまで書かれてしまった。記事を削除することも考えたが、乱立された「まとめサイト」を見たら既に「魚拓」がある。

「魚拓」とはウェブ上のコンテンツが削除される前に、その内容を完全にコピーして保存するサービスのこと。違法なものであれば削除依頼も出来るようだが、そこまでされているならデータとして所持している者は少なくないだろうし、いっそブログを放置する方が気楽だ。だいたいブログを辞めてしまったのは長文の執筆に飽きたからだ。もう何の未練もない。

 そんな事情から今回の記事を最後に、本ブログは更新を停止する。今まで有難うございました、とまで書いたところで手が止まってしまった。炎上した記事の内容を考えてみれば、こんな宣言を簡単にしてしまって良いとは思えないからだ。何せ「渡る世間は嘘つきばかり」と題して、記事にしてほしいとの声が引く手あまたのアルファブロガーだった故に知ることができた、企業や有名人の裏事情を暴露して炎上したのだから。

 とはいえ「渡る世間は嘘つきばかり」という思いは嘘ではない。ならば自分も嘘つきだとわかれば、その仮説は更に信憑性を増す。そのことに気づいて意気揚々と投稿ボタンを押した。さて次の記事は何にしようか。(了)